世界は残酷だ。それでも、光を見つけることができる。 藤原伊織 「ひまわりの祝祭」

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もし、それが事実なら世界の美術界が震撼する。伝説が修正される。
神話がもうひとつ誕生することになる。

「テロリストのパラソル」で史上初、江戸川乱歩賞と直木賞をW受賞した藤原伊織。受賞後第一作が本作の「ひまわりの祝祭 」。

天才画家ゴッホが残した「ひまわり」。数十億円は下らないだろうと言われている作品は隠された「もう1枚」があった。

その「ひまわり」をめぐって争いを起こす者、巻き込まれる者、知らず関わっている者たちの話。


妻を亡くしてから単調な、自棄と言ってもいい生活を送っている秋山の日々は、元上司の来訪で一変することになる。

彼の周りに突如現れた人々は何が目的なのか。 そこに亡くした妻が関係していると知った秋山は自らその世界に加わり始める。

キーワードは「ゴッホのひまわり」。


藤原伊織の作品はストーリーは当然の事ながら、出てくるキャラクターが素敵。
主人公格の冴えない中年男、秋山とバイリンガルの女の子以外にも、知的で格闘もこなせるゲイの原田に新聞配達青年の佐藤君と脇役も非常に魅力的!

そしてこの作者は何かしらの小物をうまーく取り入れるのだけど、今回はドーナツの模様。

決して親切に描写を描くタイプの作家さんではないけど、効果的に使う小物とリズムのいい会話のおかげで、不思議とその情景が浮かんで中だるみせずにグングンと読めてしまう。

もちろん、「主人公、物知りすぎない?」とか「原田、お前はなんでも出来過ぎじゃない??」とか思うところは多々あるのだけど、それで興ざめするのではなく、間違いなく魅力の1つになっている。

そしてこの小説、要素がすごーーく盛り込まれていて、単純にハードボイルドでも単純にミステリでもなく。かといって中途半端にならず圧倒的な勢いで迫ってくる。

万人が想像するハードボイルド風味は控えめなのに、まごうことなきハードボイルド。それはなによりも洒脱なセリフまわしがそうさせているのだろうな、と思うわ。

私、秋山さんと結婚するんです。そして秋山さんをこの残酷な世界から守るの。静かな生活で守るの。

今改めて読み直すと、なんだろう。エヴァ破の綾波的なものを感じる・・・。

私生活ではかなりの破天荒だったらしい藤原伊織は2007年に死去されたのだけど、本当に、本当に惜しかった。この人の作品をもう見ることができないなんて残念で、寂しいわ。


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