泥水に這ってなお美しい男を描く 高村薫デビュー作「黄金を抱いて翔べ」

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福沢諭吉だったら、やる気はない。金塊だから、やるのさ

暴力と退廃の香りのする大阪の町を舞台に繰り広げられる男6人の強盗劇。狙うは金塊6t。鉄壁の守りを突破し、金塊6tを手にする事はできるのか!?

か、かっこいい・・・

高村薫のデビュー作にして、日本推理サスペンス大賞受賞作が「黄金を抱いて翔べ」。 って、これがデビュー作!?

くどいほどの情景描写が得意の高村薫作品、もちろんこのデビュー作も情景描写がたっぷり。このテの作品を読みなれていない人には辛いんじゃないかしら。なんていうのか、クドさとしつこさのギリギリの点を突いている分、脱落する人が多くても不思議ではないというか。

それでも、1/3を過ぎるころになるとハイスピードで読み続ける事に。一度波に乗ってしまったらノンストップ、手に汗握る作品ね。

男性側がどう思うかはわからないけど、女性が男性に夢見る全てのモノがここにあると思う。

 野望・欲望・暴力・仲間等。この点は作者が女性ならではなんだろうなぁと思うわ。

同じく「男性への夢が込められている」作品で塩野七海がいるけれど(あ、あと浅田次郎!)、ちょっと趣き違うかしら。どちらかと言うと、高村薫のほうが欲望に近い、というカンジ。


本作品、 計画を実行に移すまでが長い長い。実行に至るまでの追いつ追われつの展開。この隙のない展開が情景描写と相まって妙にリアリティを生み出して息苦しくなるくらい。

ご都合主義はない、むしろ「強盗」に追い込まれていく主人公達。「福沢諭吉だったら、やる気はない。金塊だから、やるのさ」というセリフにあるように、目的は「達成欲」。

仲間も手に手を取るような青春時代の仲間ではなく、ベクトルの方向性がそれぞれ異なれど、同じ目的の為に命を預けられる仲間。

最後、荒涼とした世界の霧が晴れたとき、まるで音のない世界のような静かに興奮した読後感が待っている・・・かもしれないわ。

オトコというものに憧れを抱いているアナタにイチオシの作品よ!


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